歪んだたより 探偵奇談4
「女の敵は女」
瑞がそんなことを言いながらゆがけを付ける。弓道場には、伊吹と瑞と郁の三人だけだ。
「怜奈さん…落ち込んでましたね…あたしちょっと心配です」
「そうだな」
親友と決別した彼女は、改めて伊吹らに礼を言った。しかし相当堪えたようだった。伊吹は郁同様に、彼女が心配だった。自分で立ち直るしかないだろうが…それでも、誰かに恨まれ憎まれていたというのはきつい。誰だって、他人には好かれたいだろう。
(依頼を受けたとき、須丸は怜奈さんに言ってた。どんな結果になっても後悔しないで下さいって)
瑞は、こうなることがわかっていたのか。射場に一人立つ瑞の背中を見つめる。もう余計なものはすべてそぎ落としたいとでも言うように、的にだけ集中している背中だった。
「なんだか…後味悪くて、落ち込みますね」
「一之瀬が落ち込むことないよ。おまえは怜奈さんを助けたんだから」
「そう、ですかね…」
優しい彼女が責任を感じているようで、伊吹は胸が痛む。
「あたしも的前行きます」
「うん」
もやもやしたものを振り払いたくて、郁もまた弓を手にする。頑張れ、と心の中で伊吹はエールを送る。
「今日調子悪いです」
郁と入れ替わりに、瑞が出てくる。的中率は悪いようで、不満そうだ。
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白