歪んだたより 探偵奇談4
照らされたベッドの下には、女が横たわっていた。
長い髪を振り乱しており、顔は土気色。郁と目が合うと、ニタアと笑った。
(なにこれ…)
その女は異様だった。だって。首が。
ゴムのようにぐにゃぐにゃと、首が伸びているのだ。それがホースのように絡まって、くたりと床に頬をくっつけている。それがずりずりと這いまわり、時折頭を持ち上げてベッドの底にぶつけているのだった。
悲鳴を上げようと喉が震えた瞬間、瑞の言葉が雷のように郁の意識を打った。
『もしも訪問者がやってきたら、怒ってやれ。ひとんちで何してんだって。直接危害は加えられないから、大丈夫』
「あんた誰よ!ひとんちで勝手なことしてんじゃないよ!!警察呼ぶよッ!!」
郁は声の限り怒鳴った。腹が立った。こんなばかげたこと、怜奈に対する嫌がらせとしか思えない。女はふうっと煙のように消えた。郁は、消える直前の、驚いたような女の顔をはっきりと、見た。
「一之瀬さん!」
「怜奈さん、大丈夫。もう、いないよ」
「ごめんねえ…もういや、なんなの…」
「泣かないで。もう大丈夫だから」
しくしくと泣き出す怜奈の背中をさすりながら、郁は瑞の電話番号を呼び出した。指先が震えていて、今頃恐怖がやってきたことを悟る。怖かった。首の伸びた女の化け物。
(なにあれ、あの首…)
顔はみた。これからどうしたらいいのか聞かなくては。
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作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白