歪んだたより 探偵奇談4
眠りはすぐそこだ。もうすぐ温かい泥の中に身を沈めるような眠りに落ちるのだ…。郁の意識が薄らいでいく。
ゴツ、
「…!」
浅い眠りは唐突に破られる。音と、軽い振動。郁は瞬時に覚醒し、身体を起こして備える。
ゴツ、
ゴツ、
硬い音が、今度は二回連続で。そしてベッドが、音に合わせてわずかに揺れている。
「…ん、なに…?地震…?」
怜奈も目を覚ます。
ゴツ、
ゴツ、ゴツ、
音の感覚が狭くなり、郁は悟る。この振動は、ベッドの下からだ。ベッドの下で、何かが底板にぶつかっている。
「い、一之瀬さん…!」
「落ち着いて、大丈夫。あたしがいますから」
ゴツ、
急かすように叩いているかのようだ。これが瑞の言っていた訪問者?
(ベッドの下に…いるの!?)
逃げ出せない。降りた瞬間、ベッドの下の何者かに捕まる。そんな想像をかきたてられ恐怖に固まるが、怖がってはいけない。瑞の言葉を思い出す。
郁はサイドボードの照明を掴むと、そっと動く。
「一之瀬さん!」
「大丈夫、あたしが見ますから。ちょっと覗くだけ」
郁のパジャマを掴み、怜奈が不安そうにうなずく。
郁は照明を持ち、がばっとベッドの下を覗き込む。照明をベッドの下に差し込むようにして照らした。
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白