歪んだたより 探偵奇談4
『いいか一之瀬。何がおきても冷静でいるんだ。怖がったり逃げたりしたら悪化すると思う。どっちかというと、知らんぷり。おまえなんか怖くないっていう態度くらいでいい』
瑞のこのアドバイスを実践した結果、郁は怜奈を安心させることができたようだった。怪異への効果としてはどうなのかはともかく。
『それから、夜中か明け方かはわからんが、本体が現れる可能性がある。ちょっと普通じゃない訪ね方をしてくる者がいるかもしれない。おまえはその訪問者の顔を、よく見ておくんだ』
その訪問者は間違いなく、怜奈さんに近しい人間だ――
(須丸くん、人間って言った…幽霊、じゃなくて)
そこがどうもひっかかる。やっぱりストーカーの仕業なのか?
とはいえ、いつそれが現れるかがわからない。お気楽な郁とはいえ、やっぱり他人の家に泊まるのは気を遣うし、状況も状況だから気持ちが疲れていた。
(ちょっと眠らせてもらお…)
ベッドに戻り目を閉じた。柔らかなマットレスに全身を預けると、眠気はすぐにやってくる。身体は疲れていたようだ。
眠ろうと決めてしまえば正直なもので、郁はどっと全身から力が抜けていくのがわかった。
(須丸くんたち…眠ったかなあ…)
眠らずに待機してくれているのだろうか。そう思うと、眠ってしまうのはちょっと気が引ける。
(そういえば須丸くん、もう一個なんか言ってた…ええと、もしも真夜中に非常識な訪ね方をしてくるやつに出くわしたら…ええと、)
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白