歪んだたより 探偵奇談4
「ねえやめてよね」
友人はそういった。怜奈はテレビを見ていた友人と顔を見合わせた。なんのこと、と問うと、彼女は。
「トイレのドア、ずーっと外から叩いてたじゃん」
「え?」
「やめてっていうのに、しつこくさ」
そんなばかな、怜奈たちはこの部屋から出ていない。部屋と、トイレと風呂に繋がる廊下には扉があるが、そこを出てもいないしトイレにも行っていない。
「ほんとだって」
「そんなことするわけないじゃん」
怜奈たちが本気でそう訴えるのを見て、トイレで不可解な奇禍にあった友人は戸惑うようにつぶやいた。
「…じゃあ、誰よ?」
互いに嘘をついている様子もない。そんな嘘をつく必要もないのだ。
ちょっとおかしな雰囲気になる。誰もいるわけがない。念のためトイレ、風呂場、クローゼットに靴箱、流し台の下と、あらゆるところを確認したが、誰もいるはずがない。外へのドアは施錠され、チェーンもかかっている。オートロックなので、こちらから許可を出さないと、三階のこのフロアには誰もあがってこれないのだし。
「そっか…そうだよね、勘違いかな」
釈然としない様子で、友人はそう言った。その日はそのままお開きになり、怜奈も別段気にはとめていなかったのだが――
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白