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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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歪んだたより 探偵奇談4

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見えない悪意



始まりは、本当に些細なことだった。

両親の一年間の海外赴任が決まった昨年の冬。藤川怜奈(ふじかわれいな)は両親との再三にわたる交渉のすえ、一人暮らしをして日本の残るという希望を勝ち取った。
春には受験生になるし、二年のころから志望大学を目指してきたのだ。突然海外の暮らしをといわれても承服できなかった。もう一人前だと認めてほしい、自分は一人の人間で、その意思を尊重してほしいと訴えた。

折れた両親が出した条件はひとつ。叔父の住む町の高校に転校すること。なにかあったとき、そばに頼れる親戚がいるならばということになった。

そうしてこの春から、この高校の三年生になった。

叔父の住む町に越してきて、叔父宅の近所に女性専用のワンルームを借りた。できたばかりで新しいモダンな五階建てのアパート。各階にオートロックがあり、セキュリティも万全だった。駅から近いし、周囲は新しい住宅に囲まれており、夜道が危険だということもない。値は張るが、一人娘のためならばと言ってくれた両親に、怜奈は感謝している。自炊は苦ではなかったし、家事も好きだから楽しい。静かな環境で受験勉強に専念できると、そう思っていた。

それなのに。

異変を感じたのは、越してすぐのことだった。その日は、転校した学校でできた二人の友人を招いて、一緒に勉強をしていた。勉強とは口実で、女子トークに花を咲かせながらテキストを開いていたのだが、話が弾んで気が付けば九時が近かった。

「もう帰んなきゃ」
「ほんとだ」

友人二人がそう言って立ち上がり、お開きとなった。

「トイレ借りるねー」

帰宅前にトイレに行った友人を、もう一人の友人と待っていた。テレビを見ながら、五分ほどたったころ、トイレから戻ってきた友人は眉根をひそめていた。