歪んだたより 探偵奇談4
え、と三人の視線が同時に刺さる。構わず瑞は怜奈を見つめた。
「出ても意味ないっていうか」
「どういう、意味?」
真摯な瞳が、まっすぐにこちらを見ている。助かりたいという思いが伝わってきた。真実を知ったら、もしかしたら彼女は傷つくかもしれないが、それは依頼内容の範囲外だ。
「原因はあなた自身にある。あの部屋ではないから、部屋を出ても意味がない。ついてきます」
「ついてくる…」
「そうです。いくつか質問させてください」
「…どうぞ」
青ざめている怜奈に、瑞は矢継ぎ早に質問をした。
「怪奇なことが始まったのは引っ越してすぐでしたっけ」
「そうね…春、越して幾日も経ってないころだわ」
「身近に、最近亡くなった方は?」
「いない。家族にも、親類にも、友人にも」
「一人でいるときと友だちといるとき、不思議な現象がより多く起きるのはこっちだ、という印象はありますか?」
「…友人がいるときが、多いかも。噛まれたのも、今日が初めてだもの」
「現象が活性化していると感じますか?」
「ひどくなってるとは、思う」
「彼氏はいますか」
「…ええ、同じ予備校に通っていて知り合ったひとが。他校のひとだけど、そのひとが関係あるの?」
「あるかもしれないから聴いてるんですけど」
若干不審がられるが、瑞は気にしない。もういいです、と視線を外して思案する。
春から続いて、夏になって活性化しているのなら、もうそろそろ「本体」が出てきてもいいころだ。しかしよくもまあ、そんな奇怪なことが起きるのに一人暮らしを続けていられるものだ。
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白