歪んだたより 探偵奇談4
ついてくる
「あれ、伊吹先輩マガジン派なんだ」
「おまえはジャンプ派か」
「マガジンってエッチなの多くない?」
「……」
「多いよね?」
「だからなんだよっ!」
近くのコンビニで時間を潰していた瑞と伊吹は、血相を変えて駆け込んできた郁の形相をみて驚いた。
「ちょっと、ちょっとやばいよ!」
「どうした、なんかでた?」
「ストーカーじゃなくて、幽霊だよ!しかもアクシツな幽霊!」
ぜーぜー息を切らす郁を落ち着かせ、とりあえず話を聴くことにする。近くのファーストフード店に場所を移し、事情を聴くことにした。
「……噛まれた?」
「うん、突然…ガブッて」
足を見せられる。くるぶしの少し上、うっすらと歯形が見える。郁と二人でいるときに噛まれたという。部屋には間違いなく二人しかいなかったと、郁が何度も繰り返す。アイスコーヒーを飲み干してなお、興奮が収まらない様子の郁を見つめ、瑞はそうだろうなと冷静な頭で思う。
(そしてたぶん、誰が部屋に行っても噛まれるのは怜奈さんだけだ)
一目怜奈をみたときから、怪異の正体に大体の予想がついていた。今、瑞が見えているものを伝えたら、ここにいる全員に卒倒されかねないから言わないが。
「ねえやばいよ。あの部屋。怜奈さん、やっぱ出た方がいいよ」
「うん…でも…」
戸惑う風の怜奈を観察し、瑞は告げる。
「部屋を出る必要はありませんよ」
作品名:歪んだたより 探偵奇談4 作家名:ひなた眞白