小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

オールド・ラブ・ソング

INDEX|4ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

「陽子の井戸端会議」



何人かの主婦が集まっていた。
歳をとっても、色気のあるお話が盛んだ。施設に勤めているヘルパーの和子もいた。
「男も50歳代までだよね。散々遊んでも60の声を聞いたらしぼんじゃって」
「あら、私の旦那は58だからもうすぐかしら。どうせ女遊びは出来ないけどね」
「それはあなたが財布を握ってるからでしょ」笑う主婦達。
ヘルパーの和子が喋りだした。
「そうそう、うちの施設に昔は行商で羽振がよく、行く先々に女を作っていたおじいちゃんがいるのよ。でも、急激にぼけちゃって、最近は昔の女を思い出したのか
『ちかえ~、ちかえ~』と叫んでばっかりいるのよ。いい迷惑だわ」
ちかえと行商と云う言葉に反応する陽子。
「んっ?その行商の人って、名前はなんて言うの?」
「高橋次郎さんって言って、相当な資産家みたい。息子夫婦たちが来て、この間なんか相続の話しをしていたわ」
陽子は即座にあの温泉街の次郎さんだと思った。
それから陽子はみんなに温泉街の話をした。よかった。生きてるじゃないまだ。
ちかえと次郎の恋物語で盛り上がる三人。何かが起きようとしていた。



ヘルパーの和子は介護施設にて次郎に「潮の浜温泉って知ってる?」と聞いてみた。
うなずく次郎。また何かに反応した。「潮の浜温泉、ちかえ~、ちかえ~」と叫ぶ。
和子は温泉で待つちかえの男はこの次郎だと確信した。




その頃、次郎の息子達家族では財産分与について話しをしていた。
生きてるうちに、おじいちゃんの了解を取ろうと云うことになった。
「でも、名前なんか書けるのか?」
「名前ぐらい書けるだろ。読めなくても直筆であれば問題ないさ」
翌日、病室に訪れた息子夫婦たちは財産分与の所に次郎のサインを求めた。
遺言状のサインの場所に「ちかえ」の名前しか書かない次郎。
「誰だ、このちかえって云うのは?」
「何でも、最近、何回もこの女の人の名前を呼んでるそうよ」長男の嫁が言う。
「おじいちゃんの昔の女かな」
「たくさんありすぎて、わかんね~だろ」ちゃかす一番下の息子。
それを聞いていた和子は迷惑かもしれないと思いながらも、純愛を抱きながら辺ぴな温泉街で待っているちかえの話をした。
「それって、ほんとの話?」長男が聞く。
「ややこしくしないでくれよ」次男。
「関係ないさ。ただの昔の女だろ。おじいちゃんなんか日本中作っていたはずだから」
「だったら、隠れた兄弟が出てくるかもしれない。やっぱり早く決めよう」
「ばかだなぁ~。そうと決まったわけじゃないし。ちかえさんだって、ホントにじいちゃんの愛人かどうかわかるはずないじゃないか」

和子に迷惑な話だと一蹴する親族。和子は他人事ながらも何故か悔しかった。
愛人でも「本当の愛」は存在するのよ。あなた達より数倍もましだわ。
和子はまだ見ぬちかえが可哀そうでならなかった。