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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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きっとすべてうまくいく 探偵奇談3.5

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そういうところに気づけない自分に、副主将など勤まるのだろうか。そんな瑞の心理を察したのだろうか、郁が言う。

「須丸くんは、副主将だね。すごいね」
「俺なんかにできるのかなー」
「大丈夫だよ、神末先輩も一緒だし。須丸くん一年では断トツにうまいし、試合経験が多いから納得って感じ…」

そう言って彼女は鼻をすすった。

「なんか女子ら心配してたから、落ち着いたら戻ってやれよ」
「うん、アリガトー…」

ぐすぐすと鼻を鳴らしながら郁が涙をぬぐう。

いつも元気な郁が、こんなふうに落ち込んでいるのを見ると、さすがに瑞も心配になる。立ち直れるだろうか。いや、立ち直らなければいけないのだ。自分たちはもう子どもではないし、弓を引きながらそういう気持ちを乗り越える強さを育てている。
先輩たちと試合に出たかったと後悔している郁ならば、ちゃんと自分で立ち直るだろう。友人として、同じ部活の仲間として、瑞は彼女を信じていた。

「これ、貸してあげる」
「え、iPod?」

制服のズボンポケットから小さなそれを取り出し、イヤホンを抜いて郁の手に載せた。ひとつ前の古い型だけど、中学のころから重宝している。

「試合前で緊張してるときとか、結果が散々で落ち込んでるときに聴くんだ。弓道専用のプレイリスト。気休めだけど、元気出るかもしれないし」

音楽の力は偉大だ、と瑞は思う。歌詞に共感したり、メロディに元気づけられたり。弓道家ならばそれぞれに、集中法や平常心を保つ何らかの儀式を持っているものだ。瑞にとってはそれが音楽を聴くことだった。

「…ありがとう、聴いてみる」
「ん。じゃあ、あんま遅くなるなよ」
「うん。あ、待って須丸くん」

郁は同じようにポケットをさぐってピンク色のiPodを出し、瑞に渡した。