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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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きっとすべてうまくいく 探偵奇談3.5

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それぞれの音



八月が半ばを過ぎた。郁(いく)ら弓道部員は、弓道場に集まっている。静まり返る道場には、蝉の鳴き声と、インターハイから戻った三年生が、結果を報告する声だけが響いていた。一年生と二年生は、その報告を、神妙な面持ちで聴いていた。俯く者、くちびるを硬く結ぶ者。郁もまた、同じように俯いている。

三年生のインターハイは、予選敗退で終わった。高校最後の大会が、夏が、終わったのだ。

「というわけで、これで俺達は引退ということになる」

主将の宮川の声は、いつもと同じで、冷静で落ち着いている。悔しさや、悲しさがないわけではないだろうが、やり切ったという達成感のためだろうか。後悔などひとつもない、そんなさっぱりとした表情。後輩たちと向かい合う三年生、誰もが同じような表情を浮かべていた。

「とはいっても、指導も自主練習あるし、ちょくちょく顔は出すけどな」

郁はうつむいた顔を上げられなかった。
もう、公式試合で先輩たちと組むことはない。郁の目標は、ついに叶わなかった。憧れの先輩たちの背中を追って、必死に稽古をしてきたけれど、駄目だった。

「新しい主将に、神末伊吹(こうずえいぶき)」
「はい」
「副主将に、須丸瑞(すまるみず)」
「はい」

呼ばれた二人が前に出る。少し戸惑いつつも、しっかりと主将を見つめる伊吹。その隣で、いつもはポーカーフェイスの瑞の瞳が、不安なのか戸惑いのせいなのか、静かに揺れているのが見えた。

「これは三年全員で話し合って決めたことだ。強くなれよ」
「はい!」
「以上、解散」
「ありがとうございました!」

伊吹の掛け声に合わせ、全員が声をそろえて頭を下げた。

「…ううっ」

堪えきれなくなった女子が嗚咽をもらし、それが連鎖していく。