きっとすべてうまくいく 探偵奇談3.5
「御縁がある人とはね、離れていても引き合うものだから、きっとまた会えるね。この先のいつかの未来で。それとも」
声を静かにおとし、優しく祖母が続けた。
「生まれるずっと昔に、おまえが別の誰かだったころに、御縁のあった方かもしれないね」
べつの だれか だったころ?
何となく心に残るそのフレーズを、祖母の隣で繰り返す。甘い匂い。祖母はいつも、香水をつけていた。この香りは、いつも瑞を落ち着かせてくれる。
友だちと喧嘩した日も、両親に反発して家出してきたときも、他の人には見せないものが怖くて怯えていた夜も。
「あれ?」
気が付くと、子どもだった自分は、高校の制服を着て祖母の隣に座っていた。自分よりずいぶん小さくなった祖母を見て、ああこれは夢なのだと悟る。
祖母は死んだのだから。
「ばあちゃん、俺のこと心配で、来てくれたの?」
祖母は笑っている。懐かしい笑顔。瑞が大好きだったあのころのままで。
「心配かけてごめんね、ばあちゃん」
高校生にもなって、亡くなった祖母に気遣われている自分が情けなくもあり、だけどこうして会いに来てくれることに愛情を感じて温かい気持ちになる。
死してなお残るものがあるのだ。それはもしかしたら、残された者たちの願望にすぎないかもしれない。だけど、生者と同じように、逝ってしまったひとたちもまた、寂しさや会いたい気持ちを持っているのだとしたら。
作品名:きっとすべてうまくいく 探偵奇談3.5 作家名:ひなた眞白