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お蔵出し短編集

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「お父さん、なんですか」

「その通りです。国重定信は私の父でした」

「お母さんは、今日来られているのですか」

「いいえ、父や、本当のご家族に迷惑が掛かるからと言っていました」

「失礼ですが、お歳はおいくつですか」

「16です」

「それでは、国重氏が70歳を超えてからのお子さんと言うことでしょうか」

「その通りです。父が72歳の時に、母は私を身籠もりました」

「お父さんとお母さんは、どういったご関係だったのでしょうか」

「詳しくは存じません。
 それでも、私のことは恋愛関係の結果だと、私は聞いています。
 母はいつも、父のことを話す時は誇らしげでした。
 だから私は母が嘘をついているとは思いません。
 父も、数は多くはありませんでしたが、何度か私に会いに来てくれました。
 自分のことはしばらく『おじいちゃん』と呼ばせてましたけど」

「あなたがそのおじいちゃん、つまり国重氏のことを父親だと知ったのは」

「私が12歳の時です。
 中学校に上がる頃でした。
 その日は久しぶりに父が、おじいちゃんが家に来ていたんです。
 私はおじいちゃんと遊んで、夕ご飯を食べました。
 それから、お風呂の後で私は二人に呼ばれて、そこで話をしました。
 ほんとうの関係を、私はその時に聞きました」

「今日はそれでは、お父様に最後のお別れに来られたのですか」

「違います」

「違う、とは」

「父から、かつて私は頼まれたんです。

 『見てくれはこんなに歳を取った自分だが、まだまだ若いし、気持ちじゃお前にも負けない。
  俺は死なない。
  少なくともお前が大人になるまでは。
  だから、俺が死んだように見えることがあっても、その時ですら俺は死んじゃいない。
  そんなときには起こしに来てくれ。
  きっと眠りこけてるだけだから。
  頭に一撃、ガツンともらえばきっと跳ね起きるさ。
  俺はそんな時、大好きなお前からの一撃こそが欲しいと思う』

 そんなことを、父は言いました。
 だから、
 私は、
 拾ってきたんです」

作品名:お蔵出し短編集 作家名:匿川 名