お蔵出し短編集
母はゆらりと振り返り、
「ちょっと休憩」
とだけ言うと、自分の部屋に向かい、中に入ってドアをぱたんと閉じてしまった。
実は―――
僕は、ズボンの右のポケットに一通手紙をねじ込んでいた。
母に「ふうん」と声をかけられて束を奪われる前、なぜか反射的に体が動いていたのだ。
ちらりとそれが見えたことに、僕はなぜか罪悪感を感じたからかも知れない。
―――罪悪感?
いや、そうではない。
『気恥ずかしさ』のようなものだと言えば分かるのだろうか?
なぜそう僕が思ったのかと言えば、きっと、それは―――