刹那にゆく季節 探偵奇談3
「後悔しないようにしなきゃ。明日もまた同じように、こんなふうに会えるかどうか、保証なんかないんだから」
そう言い放つ瑞の声には、いつもの調子が戻っていた。ポケットからスマホを取り出して操作する。
「占いって鵜呑みにするんじゃなくて、これをきっかけに、未来の自分の行動を予測するんだって。一歩踏み出したり、慎重になったり。一之瀬が言ってたんですけど一理あるなあ。伊吹先輩の星座と血液型は?」
占うのか?
「…天秤座の、Aだけど」
絶対Aだと思ってた、と瑞がなぜか嬉しそうに笑った。
「あったよ。ええとね…周囲の環境や人間関係、出会いと別れ。あなたを取り巻く多くが揺れ動くとき。つまづいたり、悲しいことがあるかもしれません」
つまづいたり、悲しいことが…。
瑞は続ける。
「そんなときこそ自分の気持ちに素直になって。あなたが望むことをすれば、運命はあなたにとって正しい方向に動くでしょう、だって。参考になった?」
「…なるか、そんな抽象的なもん」
運命、という言葉は重く感じられる。正しい運命というのはどういうのを言うのだろうか。傷つかない、平和な日々を指すのだろうか。受け入れがたい悲しさが、正しいということもありうると思う。
そう疑問を口にすると、瑞が笑った。A型っぽい、とわけのわからんことを言う。
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白