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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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刹那にゆく季節 探偵奇談3

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あたりがざわめいている。そりゃ年上だろうなあ、と伊吹は納得する。なんとなく、同年代とは一線を画したイメージがあるからかもしれない。具体的には、とさらに詰め寄られ、瑞が答える。

「もうしかたないわねってこっちの世話焼いてくれるくせに、俺がいないとほんとはだめみたいなひとがいいですね。気が強いけど、自分の前では弱みを見せてくれるみたいな」
「それめっちゃ俺やで」
「高木先輩、やめてもらえますかまじで」

あたりが大爆笑に包まれる。同年代の男子たちと、ばかな話をして盛り上がっているときには、瑞も年相応に見えた。

「ねえ伊吹先輩は?」

突然瑞にふられ、伊吹は飲んでいた麦茶を吹き出しそうになる。

「は?」
「おっ、副主将の恋バナも聞いてみたいぞー」
「行ったれ伊吹―!」
「もー俺はいいってば…なんもないですし…」

俺なんかの話を聞いても、何一つ面白くないっつうの。おまえと比べりゃ、なんの面白みもない平凡な男だぞ。

「そういや、伊吹は去年まで他校の女子と付き合ってたよな。別れたんだっけ」
「まじですか!えっどんな子?ねえ!」

…食いつくなよ。

「なんか小さくてかわいい子だったよな?」
「通学中にコクラれたんだっけ」

もうおわったことだからいいだろ、と言いたくなる。通学中、いつも立ち寄るコンビニで見そめられたのだ。自分なんかの何がよかったのか、彼女は告白してくれた。

「なんでだめになったの?」

瑞が更に聞いてくる。純粋に興味があるのだろうけど、伊吹にはあまり気持ちのいい話題ではない。だがもう引っ込みもつかないようなので答えてやる。別にいい、減るもんじゃないし。

「部活で忙しくて会えなくなって…あと、俺は物足りないんだって。優しいばっかりじゃつまんないって」

あ、言ってて自分で泣けてくる。当時は結構ショックだった。あれ以上何をどうしたら彼女の気持ちを繋ぎとめられるかわからないくらい、大切にしていたつもりだったから。