刹那にゆく季節 探偵奇談3
お年頃なので
肝試しも無事(?)終わり、就寝時間が近くなる。男子部屋ではゲームで遊んだり、テレビを見たりと、それぞれが思い思いに過ごしている。寝るのが惜しい。こんなふうに友だちとわいわい騒ぐ夜って珍しいのだ。伊吹は数人で集まってトランプを囲んでいる。この古き良き遊びが、やってみるとなかなか白熱する。
「彼女いるやつはここでちゃんと俺らに報告するように」
各々自由に過ごしていたが、横暴な三年生のその一言で、恋バナ大会が始まった。
「というわけらしいから、はい全員集合」
心から興味なさそうに欠伸を噛み殺す主将のひと声で、みながちゃぶ台の周りに集合する。毎年この流れだな、と伊吹は苦笑する。恋バナは女子の特権だけではない。男だって、恋して悩んでぐるぐるしているのである。
「須丸はもててるらしいじゃん。三年も結構騒いでるよな」
「はあ…そうなんですか…」
瑞に白羽の矢が立った。居心地悪そうに苦笑しているこの男は、転校してからあっという間に有名人になった。目立つのだ。
いい匂いがする、都会から来たオシャレ男子。背が高くて涼し気な二枚目。言動がスマートで、ついでにちょっと生意気なところがカワイイ。
女子の間ではそんな評判らしいが、伊吹が知るこの後輩のイメージは少し違う。
ばあちゃん子で、ついでにじいちゃん子。クールに見えるけど寂しんぼ。
生きていないものと意思を通じ合わせることができ、ときにはそれらが原因で起こった「不具合」を解消することができる。
生意気は生意気だけど、優しい。年下なのに、自分よりもずいぶん大人に思えるところがある。それは、伊吹たちには見えないものが見えているからなのだろうか。
「どんな女がタイプなん?」
「タイプですか?年上ですね」
「ドキッパリ!」
「即答じゃねーか」
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白