刹那にゆく季節 探偵奇談3
これはまずい、と伊吹は冷静さを失う後輩と先輩を前に焦る。
「もう三人で手ぇ繋いでいこ!?な?!もう手ぇつなご!!??」
「そ、そうしましょう!やべえ、こええ…!やばいっすよ絶対…!」
「大丈夫だから落ち着いて」
高木と、いつもは頼りがいのある瑞までも恐慌状態である。二人を何とか落ち着かせながら、伊吹はじりじりと進んでいく。頭にろうそくを灯した白装束の女のイメージが浮かんで離れない。あんなものに遭遇したら、と想像すると恐ろしすぎる。
「俺まんなかがいい!俺まんなかがいい!横からなんか来たら死ぬ!」
「高木先輩落ちついて…!大丈夫ですから!」
「伊吹先輩!俺もまんなかがいい!高木先輩詰めて下さい!俺一年ですよ!?」
「いやだあ!!おまえら俺を守れ!!」
「なんだこの状況!最悪だよ!」
男三人でなんという肝試しだ。伊吹はこの面倒くさい二人を放り出して逃げ帰りたくなった。しかし自分の責任感の強さというか、ルールを破れないまじめさのようなものが祟り、とてもそんなことはできない伊吹なのだった。
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白