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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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刹那にゆく季節 探偵奇談3

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「あ、伊吹(いぶき)先輩だ」

副主将の神末(こうずえ)伊吹だった。

「…なんだおまえか。これ誰?倒れてるじゃないか」
「高木先輩です。失神しちゃった」

怖がりというのは本当だったらしい。面倒くさいを通り越して、気の毒になってくる瑞だった。こんな先輩だが、県大会では個人五位入賞、インターハイの団体戦では大前を務める予定の男なのだ…。

「ここに置いて二人で戻りましょう」
「鬼かおまえは。背負ってさしあげろ」
「絶対ごめんです」

おでこをベンッと叩くと、高木は目を開けた。

「先輩ご無事で?」
「ううーん、ハッ、俺は一体何を!」
「失神です」

もう散々である。さっさと役目をすませて温泉に浸かりたい。

「須丸、神末、ゴールまで俺を守ってくれよ~~!!」
「高木先輩と須丸でラストですから…じゃあ俺も一緒に戻ります」

三人で遊歩道に戻ったそのとき。

ザッ…

砂を踏む足音のようなものが聞こえた。背後からだ。

「…足音?」
「脅かし役の二年か?」
「高木先輩と須丸で最後だから、最終地点にいる俺以外は、全員引き揚げたはずです」
「なあおい、ちょっとやべえって!これまじで足音じゃね…?」

ザッ、ザッ…

一定の間隔、非常にゆっくりとした感覚で、それは近づいてくる。

「撤収したはずですよ。それにここは、俺しか配置されてません」

ザッ…

沈黙の中、足音は確実に自分たちに迫ってくるようだった。ざざ、と心なしか風が強くなった気がする。

「…須丸、おまえこういうの大丈夫なんだろ?」

伊吹が静かに言った。恐慌をきたさないよう、己を律している声だ。さすが副主将、高木先輩とは一味違うなんて、瑞はこんな状況で冷静に自分の先輩を分析する。