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キミをわすれないよ

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『くすぐったい』
「え? きみ感覚があるの?」
『ま・さ・か』

なんという言い方。
僕は人間の女性にこんな言われ方をしたことはないくらい… 可愛い。
かつて、女性と親しく付き合った経験は乏しくて、その相手との距離は縮まらず。こころに至っては遠くのまま、さらに遠ざかっていってしまったのが現実だった。

「さっき、きみは僕の彼女だって言ったよね」
『言ったわ。でしょ? じゃないの? うっそぉ!? 違うの? いやぁん……』
「わぁ! ま、待てよ」
『わぁ。はい。待つわ』
「僕は、まだきみの扱い方がわからないんだ。店主がきみに訊けと言った。質問するよ」
『はい。じゃあ アタシを横に座らせて』
「座る?」
その携帯電話風の不可思議な道具のいうとおりに 二つ折りを座椅子のように広げてベッドの横の棚に置いた。
「これでいいの?」
『んー。少し遠いけど我慢する』
棚は、僕の間近にあるのに それでも遠いってどうすればいいのか迷ったが、とりあえずの取扱説明を訊くことにした。
『ねえ、アタシのこと知りたい? でも女の子の秘密は教えてあーげない』
僕は、何から訊いたらよいかもないままに 思いつく不明点を聞き始めた。

僕は、可笑しな世界にはまりこんでいると思ってはいるものの、コイツと話していることが自然で馴染んでいるように感じていた。普通に女の子と話せているようで楽しかった。
きっと 人に話したらほとんどが「おまえ大丈夫か?」と言うかもしれない。

しばらくして、会話が途切れた。
「あれ? おい、どうしたんだよ? 故障かなぁ」
電子音のような音とモニター画面に文字が出た。しかし、僕が読みとる前に消えてしまった。手に取り見回してみると、本体の端っこの緑色のランプの点滅が橙色に変わっていた。
(もしかして、電池切れか?)
僕は、急いで店主がしていたようにコイツを両手で挟み、擦ってみた。
「おい、しっかりしろよ。何とかならないのか?」
徐々に僕の手は温かくなってきた。
『もう!くすぐったいー。もっと優しくー』
「わぁ! 戻った」
『わぁ。優しく擦ってね。説明書ナンバーロク。本体との摩擦で充電できます』
「そうなのか。そうだ、きみって 僕がわぁ!って言うと わぁって言うよね」
『面白いんですもの。プログラムにセットされました』
「それは 削除できないのかい?」
『しなぁーい。できなぁーい』
コイツは また嬉しそうに話し始めた。

作品名:キミをわすれないよ 作家名:甜茶