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キミをわすれないよ

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『もう、お喋りは済んだのかしら』
「わぁ! あ、ああ済んだよ。聞いてたの? 可笑しいだろ?」
『わぁ。聞いて欲しくなかった? あのね。星の王子様ってお話あるでしょ』
「この時期になると 出てくる話だよな」
『んーそれは 幸福な王子じゃないかしら…』
「そうだっけ?幸福だけど若くして亡くなって宝石とか配って最後は天で幸せになる王子」
どうも 僕はおいしいところだけ覚えていただけのようだ。間違っていた。
『ねえ、ケイと仲良くなれる? こんな可笑しな形のケイだけど…』
「まあ、よくわからないうちに こんなことになってるけど、嫌じゃないな」
『お話の中に《大切なものは、目に見えない》って台詞があるのね』
「そうなんだ」
『ケイの姿がなくても 仲良くなれる? 子どものように想像をいっぱいしてケイのこと作り上げて仲良くしてくれる?』
そう訊かれて 僕は考えた。
ケイとは、まだ間がないから仲良くなれるかなんてわからないことだ。だけど、お気に入りにしているサイトで文字を交わす人とは、嘘がなければ性別はわかるものの、顔はもちろん、名前も歳も曖昧というよりも不明のままで心を開いている。その時の欲しい言葉に 感激し、この人は僕の心の人だ。と感動することもある。
《大切なものは、目に見えない》とは逆だけれど《目に見えなくても 大切なもの》ではないだろうかと気づかされた。
「ケイと仲良くなれると思えるような気がするけど」
『ホントぉ?』
急に ケイの口調は、以前のように弾んできた気がした。
『じゃあ、じゃあね、ケイが連れて行ってって頼んだら どこでも行ける?』
「たぶん…」
『じゃあ、じゃあね、ケイのことお友だちとか お仕事の人に紹介してくれる?』
「そ、それはちょっとぉ……」
『だめぇ?』
「そんなことばかり言ってると パチンって電源OFFにするぞ」
僕は、勢いで電源を切った。ケイは、何も言えなくなった。
そうだ。言わなくなったんじゃない。僕が言えなくしたのだ。
顔が見えない。連絡も取りたくなければ オフにすれば切れる。なんて容易いことだろう。

そして、僕は ケイをそのままにして 再びパソコンへとずっと向かっていた。あろうことか、僕の意識が目覚めたときは 窓に朝日が輝いていた。

作品名:キミをわすれないよ 作家名:甜茶