眠りの庭 探偵奇談2
それがあの祠か、と瑞がつぶやく。
「あの庭には、動物たちの魂が眠ってるんですね」
「ええ、そうです。それらの動物の中に、真っ白い狐がいたって、当時先生に聞きました。山を追われて道路で車にはねられたって。白い動物は神様のお使いだから、申し訳ないことをしたと、あの祠のもとに供養を行いました」
あいつ狐なのかあ、と瑞が言った。
「あの子、生徒のことをにこにこしながら見てたっけ…」
「大きな犠牲のおかげで、生徒が安心して勉強できます、ありがとうございます、どうか見守ってやって下さいと、校長はそう言っていましたね。子どもらの楽しい声を聴くのがお好きなお狐さんなんでしょうな」
浅田も、その少女を見たことがある。草むしりをしたり、花壇の整備をしているときに。にこにこと、ありがとうとでも言うように、浅田を見つめていた。そこに工事の手が入り、動物たちの眠る場所を破壊しているのだ。怒りはもっともだろうと浅田の胸は痛む。
「工事をとめることはできませんか」
「わたしはただの用務員ですから…」
反対はした。由来を言って聞かせた。だが学校側は、そんなこと聞き入れてはくれなかったのだ。
「生徒たちは反対してるって…」
「ええ、使いやすい、落ちつくって言ってくれてるんですよ」
「浅田さんが手入れをしてくださっているからですね」
労うように言われ、浅田は胸が温かくなるのを感じた。不思議な少年だ。話をしていると、優しい気持ちに浸かっていくような。
作品名:眠りの庭 探偵奇談2 作家名:ひなた眞白