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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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眠りの庭 探偵奇談2

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狂うは痛み



朝から物憂い曇り空が広がっている。一雨来そうな雰囲気だ。もうすぐ一時間目が始まる。数学だ。難解で退屈な授業を思うと逃げ出したくなる郁である。

「郁ちゃん郁ちゃん。須丸って休み?」

ぼさーっとしていたら、クラスの女子に話しかけられた。学年でも有名な美人二人で、大人っぽい。

「朝練にはいたから、来ると思うよ」

そういえば教室に姿がない。今朝も欠伸ばかりしていたが、やっぱり体調がよくないのだろうか。

「朝練もあんだね。弓道部って休みとかないの?」
「うーん。土日は稽古と練習試合ばっかりだからなあ。ないねえ」
「そうなんだー。遊びに誘おうと思ってるんだけど、あいつまじめに部活やってんだね。ありがとねー」
「うん」

二人が去っていく。もてているなあと郁は感心して、彼女らの背中を見つめた。

「そばにいると、すっごいいい匂いするよねー」
「わかるー!好きー」

結構なことだ。それにしても、もうすぐチャイムが鳴るというのに、彼は教室に現れない。

「ねーちょっとやばいんだけど!」

一人のクラスメイトが教室に飛び込んできた。

「女子トイレの鏡、全部割れてんの!」
「えー!」
「まじで!」

教室中がざわめき、数人が廊下に飛び出していく。

「なんか最近おかしなこと続くよね?」

郁の前に座っていた友だちが振り返って言った。

「うん…」

おかしなことが続く。そうなのだ。部活でもその話題があがっていた。

(またなにか…おかしなものの仕業なのかな)

雨の夜に体験した、あの不思議なこと。また人間ではない何かが関与しているのだとしたら…。

(須丸くんなら、何か知ってるのかな…?)

瑞に聞いてみようか。チャイムと同時に教室に飛び込んできたか彼は、今日は眠そうな様子はない。その代わり、何かを思案するかのように難しい顔をして考え込んでいるのだった。



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