路上の詩人
新聞配達
東京に出ると生活のために大学時代に経験のあった新聞配達を始めた。
販売店の紹介で安アパートに住んだ。
ほとんどとなりのテレビの声が聞こえる。
朝は3時に起きた。夕刊の配達はやらない約束なので、あとの時間は自由に使えた。
彼にとっては最高の人生であった。
本を読み、詩が書けた。
1年ほどたった時の事であった。
余りに新聞が溜まり、初めはどこか旅行にでも行ったのかと思っていた。
どんな人が住んでいるのかも知らない。一戸建ての住まいであった。
余りに気になり、隣の方に声をかけた。
一人暮らしの男の方と言った。年は70歳くらいとのこと。
二人でチャイムを鳴らしたが応答はない。
交番に届けた。死亡していた。
それ以来、上田誠は新聞店を辞めた。
自分の人生は今日1日だと思うようになったのだ。
その1日を悔いのないように生きたかったのだ