路上の詩人
リストラと離婚
上田誠は大手電機会社に勤務していた。会社の経営状態が悪くなっている事は気が付いていた。
人事部にいたのである。新規採用者が極端に少なくなっていた。
早期退職者を募集することになり、彼はそれに手をあげた。2500万円の退職金が出るためであった。
所が彼の妻は反対であった。
二人の間には1人娘がいた。高校1年生である。
彼女には離婚の事は話さずに、単身赴任と言うことにした。
彼は1000万円を貰い、何か事業を興そうと考えていた。
ハローワークに通ううちに、別の考えが起きてしまった。
20年間1000万円で暮らす方法である。65歳になれば年金がもらえるはずである。
1ヶ月4万円で生活すれば良いのである。
それが出来れば好きな事が出来ると考えた。
彼が好きなこととは、詩を書くことである。
小学5年生の時に彼の詩が新聞に載ったのである。
それ以来、高校大学と文芸部に籍を置いた。
地方ではあったが文芸賞になり、賞金5万円を頂いた事もあった。
いまの彼は妻子よりも詩を書くことがすべてであった。