路上の詩人
「やきいもよ」
化粧の臭いの強い女性である。
礼を言うより早く腹がなった。
「お腹すいていそうで良かった」
彼は皮のついたまま口に入れた。物を食べていないからだろう唾液が出ない。
喉につかえてむせた。
「大丈夫」
彼女は背中を叩いてくれた。
「それにしても臭いわね」
彼は黙っていた。
「今日は休みだし、シャワー浴びる?」
「出来ませんよ」
「シャイなんだ。詩を書くから、そうなんだ」
誠は焼き芋を口に入れた。
もうはるか遠くに捨ててしまったはずの恥じらいを感じた。
「どうせ寝る所もないんでしょう。家に来ていいから」
まだ口のなかの芋を無理に呑みこみ
「そんなことはできません」
と小さな声で言った。