路上の詩人
彼の詩をいつも買ってくれる常連客が五人ほどいた。
名前は知らないが化粧の臭いが強い女性がいた。
夜の仕事をしていることに間違いはなさそうな人である。四〇歳くらいに見えた。
「この間のも良かった」
何時もそれだけを言い千円を置いて行く。
初めて買ってくれた時釣り銭がなくて
「百円ないですか」
と言ってから釣り銭は取らない。
もう一人の方は、初老の女性である。
多分彼を惨めに感じたのであろう。まるで賽銭のように百円玉を空き缶に入れる。
カラカランと音がわびしい。
三人目は女子大生。彼女はアメ横でバイトをしているそうだ。
「おじさんの詩好きだよ」
彼は自分の娘を思い出してしまう。
だから彼女をモデルに詩を書く事もある。それが彼女の共感を呼ぶのかもしれない。
四人目は近くのパチンコ店のマネージャーである。
誠がここで詩を売る日は1と5の日と決まっていた。
ときどき気に入った詩があると、パチンコ店で朗読してくれるそうだ。
五人目は小学生の女の子である。
だれに聞いたのか知らないが交通事故で寝たきりの母親に買っていくそうだ。