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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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路上の詩人

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翌日誠はジーパン姿で指定の現場に行った。
「良く来たな」
昨日の人が親方らしい。
「これに着替えてみな」
作業着を貸してくれた。ヘルメットを被り、地下足袋を履いた。
「今日は見学のつもりで言われたことをやればいいから、事故には気をつけてな」
誠の言われた事は、鉄筋を加工場や現場に運ぶ事であった。
30キロから50キロの鉄筋を肩に乗せて運ぶのだ。
12月なのに汗が出た。疲れた。他の職人は平気な顔をして働いていた。
誠は父の事を思い出していた。この鉄筋工をしていたのだ。
現場が変わるたびに飯場を転々とした。友達も出来ず、こんな生活から逃げたい一心で勉強をした。
こうして自分が働いてみると、父の偉大さを感じた。生きるため、それも家族を養うために、これほどの苦労をしていたことへの感謝であった。
なんて自分は馬鹿なのだ。
妻子を捨てたのだ。詩を書くために。
1日の仕事が終わった。誠は詩を預けてあるコインロッカーに立ち寄った。
全てを袋に入れた。文房具店で段ボールを買い、カウンターで詩を入れた。
ガムテープでふさぐと何かが吹っ切れた。麗の部屋には持ち込みたくなかった。
宛名を書き妻に送った。
作品名:路上の詩人 作家名:吉葉ひろし