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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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「おい、なんか一年の女子が呼んでるぞ」

友人に言われて教室の入り口を見る。小柄な女子生徒が、こちらの姿を認めてぺこりと頭を下げた。

「一之瀬?」

弓道部の後輩、一之瀬郁だった。小さな顔をボブヘアーに包んで、少し緊張気味にこちらを見上げている。

「お昼休みにすみません、先輩」
「どうしたの」
「うちのクラスの転校生で、入部希望者の子がいて」

おいでおいで、と郁が教室の外へ顔を出して手招きをする。現れたのは背の高い男子生徒だった。ミルクティー色の髪、澄んだ瞳をまっすぐこちらに向けてくる。しかしの瞳は、こちらの視線とぶつかると、驚いたように見開かれた。

「―――、」

伊吹(いぶき)もまた、言葉を飲み込んだ。目の前の男子生徒を見て、心に浮かんだ感情に戸惑う。

あれ?
こいつ誰だっけ。
なんだっけ。

そんなふうに感じる自身がいて、伊吹はどうしていいかわからなくなる。どこかで会ったことがある?いや、初対面だ。

なのにこの、湧き上がる懐かしさはなんだろう。胸が苦しい。

「…どこか、で」

向こうもまた、戸惑ったようにそう零す。しかし。

(――だめだ)

伊吹の中で、瞬時にそんな警告が発せられる。思い出してはいけない、と。

「俺は弓道部副主将の神末(こうずえ)伊吹です」

不可解な感情と既視感をおしこめ、伊吹は言った。考えることを、思い出そうとすることを、頭の中が拒絶している。自分でコントロールできない不可思議な脳の命令に従うと、相手もまた慌てたように頭を下げた。