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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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ふたたび



郁の高校は、山を背にした小高い丘に建っている。街はずれにあり、周辺は静かだった。坂道を上って登校するのは骨が折れるが、教室の窓からは街並みが一望できるのが嬉しい。歴史が古く、校舎は綺麗とはいいがたいが、昨年度から新しくなったブレザー制服が今風で、生徒たちは気に入っていた。

公立校ながら文武両道の名のもとに進学率の高さと全国大会への出場を誇る運動部のレベルの高さがうりだ。郁の所属する弓道部も、インターハイの常連である。厳しい指導と練習で有名だった。初心者の郁がそんな弓道部に入ったのは、四月の部活紹介で見た主将の射があまりにもかっこよかったから、袴をはいてみたかったからというミーハーな理由だったが、いまは稽古が楽しい。まだ弓は引かせてもらえないが、心をとことん静かにする時間が好きで続けている。のんびりした自分に、弓道はあっている気がする。

「京都から転校してきた、須丸瑞くんだ」

朝のホームルームで、郁はさっそく今朝の男子生徒と再会を果たした。

「須丸瑞です。よろしく」

瑞は目立つ。ミルクティー色のきれいな髪、整った派手な顔立ち。手足が長くてスタイルもいい。着崩した制服もどことなくセンスを感じさせる魅力があった。
物おじしないタイプのようで、一時間目が終わるころにはもうクラスメイトたちとラインの交換が行われていた。瑞はすっかりクラスに溶け込んでいる。

「なんで京都からこんな田舎に来たん?」
「じーちゃんがこの街にいて。ばーちゃん死んで一人になったから、心配で来た」
「まじでか。よく親許したなあ」
「問題起こしたら引きずり戻すって脅されてる。ちょう怖い。だからまじめに生きる」
「ぶはは」

祖父を心配して一人でやってきたという。ものすごい行動力&祖父への愛だ、と郁は感心した。派手な外見とは裏腹に、素朴で優しい面があるのかもしれない。