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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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思いが伝わる…。

「除霊とか、悪魔祓いとか、そういうことができるってことか?」
「自分の家に突然見知らぬひとが雨宿りに来たら、先輩は刃物持って追い出しますか?」
「…しないな」
「俺は幽霊とかはよくわかんないんですけど、除霊ってのはそれと同じじゃないですか。雨に濡れて震えている者に、それはあんまりだ」

先輩ならどうしますか、と再び瑞が問う。

「…しばらく軒を貸して、濡れてるようならタオルくらいは貸すと思う」
「俺がやったのはそれだけのことです」

帰りましょう、と瑞が促し、三人は揃って教室を出た。現実に帰ってきた、唐突にそう感じ、ようやく郁は安堵の息を吐く。

振り返って、もう一度教室を見た。

(…雨宿りくらいなら、来てもいいよ)

誰だって、冷たい雨は嫌だ。
寂しいのは嫌だ。

ひとりぼっちは、嫌だ。

世界は広くて、夜は長い。誰にとっても、そうなのかもしれない。

(須丸くんは、それがわかったんだな…)

奇妙な体験をしたというのに、心が何だか穏やかだ。優しい気持ちで満たされているのは、月明かりが美しいせいだけではないだろう。

「今夜のこと、宮川主将には絶対内緒ですよ」
「おまえが俺に対する態度を改めるなら考えてやってもいい」
「…さっきのこと根に持ってます?」
「持ってない」
「絶対持ってる…」
「持ってません」
「スミマセンデシタ…」

そんなやりとりを交わす二人の背中を見つめながら、ふわふわとした足取りで歩く。おかしな二人だ。

月明かりが柔らかく降り注ぐ。さっきのひと、もう寂しくないかな。郁はそんなことを思うのだった。



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