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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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音もなく。
影はじわじわと月明かりに溶けて、やがて見えなくなった。淡い光に浮かぶ教室は、いつもの教室だった。

「…行ったのか」
「はい」

瑞が答え、郁の背後から手を伸ばして戸を閉めた。膝の力が抜けて、郁はその場にへたり込む。

「何だったの…」

すべてが衝撃的な体験だった。今になって静かに押し寄せてくる驚嘆。自分はなにかすごい体験をしてしまったのではないか。

「あれは、古い土地に宿った意思が、影を借りて形を成したもの」

だと思うんです。瑞がそう説明する。

「おまえは、見えるんだな」

伊吹が神妙に呟き、それを受けた瑞は少し居心地悪そうに相槌を打ってから、そして答えてくれた。

「俺は昔から…そういうものが見えたし、聞こえた。信じてもらえないかもしれないけど」
「何か…話をしていなかったか?」
「死んだばあちゃんが教えてくれたんです。怖がらなくていい、だけど領域を侵すなって。形は違えど、命の持ち方は違えど、俺らと同じに存在しているんだって。腹たったら怒るし、優しくされたら嬉しいんだ。それを理解してから、怖くなくなりました。そして、意思疎通が可能になった」

意思疎通?

「声が聞こえる?」
「というより、思いが伝わる…うまく言えない」