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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

INDEX|30ページ/34ページ|

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「一之瀬がここを開けるんだ」
「え…」

柔らかな口調で瑞が続ける。

「招き入れたのは一之瀬なんだから、解き放つことができるのも一之瀬だけだ」
「…」

確かに自分にはその責任があるようで反論できない。怖いけどやるしかないのか。

「責めてるんじゃないんだ」
「え?」
「雨に濡れてかわいそうだって、そんな思いから出た言葉だったんだろ?嬉しかったと思う。だから別に、怖がることないよ」

影は、窓のそばを動かない。

(…嬉しかったの?)

自分の何気ない行動を、この影は、本当に。

(ひとりぼっちで寂しかったのかな…だから賑やかな学校が居心地よかった?)

得体のしれない不可思議なものを、このときはじめて郁は自分と同じ生き物のように認識した。そのとたん、恐怖はウソのように消えた。

「さあ、お行き」

瑞の声が導く。

「雨は、もうやんでる」

瑞の言葉に初めて気が付く。雨がやんで、雲の切れ間から月明かりが差し込んでいたことに。
淡く青白い光の中で、影はいっそう黒く深く見える。それでも。


「…どうぞ」


もう郁は怖くないのだった。ガラス戸を開け、外へと促す。