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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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嘘だろ、と囁く伊吹の声。信じられない思いだが、成り行きを見守るしかない。雨の教室、得体のしれない影と瑞。いまここに、存在を許されているのは、瑞だけ。そんな気がしてうすら寒くなる。

「雨、冷たかった?」

友だちに尋ねるような優しい口調だった。

「でもここに、きみの居場所はないんだ。ここは、生きている者の集う場所だから」

影は動かない。郁は雰囲気にのまれ、指先ひとつ動かせない。金縛りのように。伊吹も同じようで、微動だにしない。

(時間が止まっているみたい…)

相対する二つ。生きている者と、夜の者。。ただ、じっと向かいあっているだけ。対話ではない。しかし言葉以外の何かで、瑞は対話を試みているのかもしれなかった。

雨の音が遠くなる。闇がうごめくのをやめた。どれくらい時間が経ったのだろうか。


「おいで」


瑞が口を開き、金縛りがとける。久しぶりに呼吸をしたかのような、今まで夢でも見ていたかのような感覚。

瑞はベランダへ近づく。そしてガラス戸に手をかけた。

「一之瀬」
「……は、はい!」

ぼんやりしていて、返事が一瞬遅れてしまう。