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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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「昨日一之瀬が招き入れた、あの影を追ってます」
「え…見えるの?須丸くん」
「いや、水音が聞こえるんだ。歩いてるみたいな」

そう言われて耳を澄ますが、郁には雨音しか聞こえない。伊吹も同じようで、戸惑うように瑞の言葉を待っている。

「あれはね一之瀬、別に悪いオバケとか妖怪じゃないんだと思う」
「え?」
「日の光のもとでは存在できず、夜の中を歩く回っているだけなんだ。おまえの優しさに触れて、ちょっとだけ雨宿りしに来たんだよ」

雨宿り…。
瑞の声の響きは、優しく柔らかかった。郁はその言葉を反芻する。

「居心地がよくて長居してるのか、帰るとこがわからなくなってるのかは知らない。でも、ここはあれのいていい場所じゃない。こちらとあちら、どちらかに障りが出る。だから帰り道を作って出て行ってもらうんだ」

こちらとあちら。その言葉が妙に心に残る。障り、というのはよくわからないが、今日郁たち学校の生徒が感じた恐怖や騒動を指しているのかもしれない。

帰り道を作るって、と伊吹が聞き返した。

「どうやってだ?」
「それは…うまく言えないから見ててください」

二階に辿り着く。階段のすぐそばに図書室。向かいに家庭科室。そこからまっすぐ伸びる廊下の脇には郁たち一年生の教室が並ぶ。どんつきに生徒指導室と南側階段。瑞は家庭科室の前で立ち止まった。

「あ」
「な、なに」
「俺らの教室に行った」

そう呟く瑞。しかし教室の扉が開く音もしないし、暗がりの中には何も見えない。瑞には聞こえていて、見えているのだろうか…。