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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

INDEX|25ページ/34ページ|

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「…真っ暗だね」

郁は誰にともなく呟く。本当に暗いのだ。夜の学校。外は雨。電気は落ちており(つけたら先生にばれる、親呼ばれて退学になったら困る!)、非常灯と闇に慣れてくる自身の目だけが頼りだった。

ここは、昼間の学校とは異なる空間。日常の裏側だ。いつもここで勉強していることが信じられない、と郁は思う。光を失うだけで、見慣れた場所は見知らぬ世界へと姿を変えてしまうのだ。

「こっち」

そんな中を、瑞だけが淡々と進んでいく。何を指標に歩いているのかわからないが、はっきりと目的や手段を理解している歩みだ。怖くないのだろうか?お化け屋敷ならいい。何が起きても、何が出てきても、人間の仕業だから。だけどいまは違う。何か起きたら、それは得体のしれない何者かの仕業ということになってしまう。郁はそれが恐ろしい。幽霊やお化けというものの存在を認めてしまうことになる。

「怖いなあ…こんなとき宮川主将がいれば…」
「おい何言ってるんだよ、一之瀬。オバケが怖い神末先輩が一緒じゃ頼りないだなんて、失礼だぞ?」
「いや、おまえがな。喧嘩売ってるのか?」

こんな状況なのにおかしい二人だ、と郁はちょっと和んだ。

「冗談です。頼りにしてますよ」
「信じない。それで須丸、どうする気なんだ?」

郁の隣を歩く伊吹が尋ねる。得体のしれない何かが校内に入り込んで彷徨っている。それを何とかすると言い学校へ侵入したものの、何をどうすれば解決になるのか、郁にもわからない。自分たちは霊能者でもゴーストバスターズでもないのだ。

「言ったでしょう。あるべき場所に帰ってもらうんだって」

瑞は歩みを止めないままそんなことを言う。階段を登って上を目指しているようだ。

「待て。ちょっとわかるように説明してくれ。おまえ何しようっていうんだ」

このまま闇にずんずん足を踏み入れてもいいものなのかと、伊吹も不安なのだろう。郁も同感だった。

「あ、先輩怖いんですね」
「…そういうわけじゃない」

暗がりに見えないが、瑞の笑っている気配が伝わる。