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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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「一之瀬は先帰れ」
「だめだよ、一人でなんかあったらどうするの」
「なんもないから」
「おいおいちょっと待て待て」

突然会話に飛び込んできたのは、神末伊吹だった。傘を畳みながらそばに寄ってくる。瑞を見上げて、睨むように非難の目を向けてくる。

「おまえらまた学校戻ってくから何事かと思ったら…この雨だし、さっさと帰れ」

彼は渋い顔をして瑞と郁を交互に見つめている。心配してついてきたのだろうか。

「こーずえ先輩…あたし退学になるかも…」
「は?」

郁が情けない声で昨夜の話を繰り返す。困惑したように、だが最後まで口を挟まずに伊吹はその話を聞いた。

「……それで、何とかしに行くって?」

問われて頷く。

「はあ、まあ」
「相手がわけわかんないもんでも、何とかできるっていうのか?」
「やってみなきゃわかんないけど、こーゆうの、俺初めてじゃないから」

どういうこと、と郁は眉を顰めるが、瑞は頷くにとどめた。それを聞いてしばし考え込んだ伊吹だが、やがてよしと頷いた。

「じゃあ俺も行く」
「先輩はいいですよ。先帰ってください。俺らなら大丈夫だから」
「監督責任があるんだ。夜の学校で大騒ぎされたら困る」

副主将としての責任というわけか。
だが厳しい言葉とは裏腹に、はっきりとした気遣いが感じられた。鬼のような主将に比べて、伊吹はどちらかといえば穏やかにひとを諭す。稽古中も同じだ。後輩に慕われるのは、この柔らかな空気のせいなのだろう。

懐かしい、とやはりそう感じる。やはり自分は、こうして彼の温かな人柄に触れたことがあるのではないか。

「心配してくれてるんですね」
「監督責任だって」
「素直じゃないね先輩」
「…おまえ先輩に対して生意気だぞ」

行こう、と伊吹が先頭に立って歩き出す。三人は夜の学校へ足を踏み入れた。非常灯の明かりが怪しく光り、雨音は囁くように耳を支配する。



  
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