小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

雨闇の声 探偵奇談1

INDEX|23ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

みちびくは



幼いころ、瑞は暗闇が怖かった。夜眠るときは電気をつけて眠らないと無理だった。

だって見えるのだ。

暗闇をうごめく土くれのようなものや。
見下ろしてくる目玉が。
大木の下にひっそりとたたずむ顔のない女まで。

人間はそれらを幽霊とか妖怪とか名づけた。しかし瑞にとってそれらは総じて怖いもの、夜のものだった。ひとくくりにして、ひたすら見ないようにして生きようと思った。まだ小学生にあがる前の頃だ。

夏祭りの帰り道。幼い瑞に祖母は言った。
田んぼ道に明かりはなく、瑞は後ろからヒタヒタと近づく足音におびえ、祖母の足にしがみついていた。

瑞。怖がらなくてもいいの。
人間は明るい光のもとを生きられるけれど、暗い影としてしか存在できないものがあるのよ。

祖母の声は優しかった。

だから夜の中を歩くときは、そんな存在とすれ違うこともあることを覚えておきなさい。
光を持たない哀れなもの。それを勝手に恐れて、傷つける権利は誰にもない。
ただそこでひっそりと存在しているだけ。必要以上に怖がることなんてないのよ。

その言葉の意味を深くは理解できなかった。しかし祖母の言うように、それらが瑞を脅かしたり襲ってきたことは一度もなかった。

おまえには見えてしまうのね。だけど向こうの領域を、存在を、脅かすようなことをしなければ大丈夫。

祖母はそんな言葉で、瑞の恐怖を和らげてくれた。そして成長するにつれて、瑞は祖母の言葉を少しずつ理解していった。