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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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「…部活の時にも聞いたよね?今日、学校中でいっぱい変なことあったんだって」
「聞いたよ。俺らの教室の前も、なんかおかしなことになってたよな」

あれ、あたしのせいかも、と彼女は呟いた。街灯に照らされた横顔は青ざめている。

「あたし、昨日…教室にスマホ取りに行って、ベランダにいるあのひとのこと、呼んだの。戸を開けて、濡れるから入ったらって。あたしが中に入れちゃった気がするんだ…。だから学校で起きてるわけわかんないこと、もしかしたらあたしのせいかも。どーしよ、親呼ばれて退学になったら…」

親呼ばれて退学、のあたりで吹き出しそうになったが、郁の表情は今にも泣きだしそうなほどだった。真剣に追い詰められているのだろう。

「招き入れたってことになるのか。だから校内を、わけのわからんものが彷徨ってると」
「そう思うんだけど…」
「そのわけわからんものを、元通り外に出してやれば、騒ぎは収まるかな?」

そんなことできるの、と郁が顔を上げる。

「多分」
「だって相手はオバケかもしんないのに?怖くないの?」

そういうものを、怖いと思ったことはない。
どちらかといえば、幼いころから身近に、親しみを感じてきたものだからだ。

「殺人鬼相手にしたり、ストーカー相手にするほうがよっぽど怖いよ」

わけがわからん、という表情を浮かべている郁。

「事態は多分、一之瀬が考えてる通りだと思う。夜の中から招かれてやってきたものは、あるべき場所に帰ってもらえばいいんだ」

善は急げ、と昇降口に行きかけた瑞の腕を、郁が掴む。

「今から!?真っ暗だよ」
「明日になったら、たぶん校内びしょ濡れだよ。それに、もっと怖いことが起きる」

もっと怖いこと、と呟き、郁が凍り付いた。脅したつもりではなかったのだが。