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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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古い祖父の家。あたりは田畑に囲まれており、隣の民家は遠く、車の音や人の声は聞こえない。広い平屋だ。素朴な佇まいや、実家にはない静けさが彼は好きだった。幼いころは、軋む廊下や古ぼけた蔵が恐ろしかったが、高校生になった今はそれが心地よく感じるのだから不思議なものだ。

「お、今日から早速部活か」
「うん」

朝食を終えて玄関に立てかけてある弓と矢筒を手にする。

「こっちでも弓道を続けるのが、じーちゃんと暮らす絶対条件だから」

小学生のときから始めた和弓で、彼はそこそこの成績を残してきた。弓を引くのは生活の一部でもあったので、辞める気はなかったのだが。母にしたら、部活をするイコールまじめな学生生活らしい。別に弓道部である必要はないのだが、ちゃらんぽらんな息子を信用できない母は、礼節を重んじる弓道部にいればグレることもないと信じているらしいのだ。

「じゃあ行ってきます」
「瑞(みず)」
「なに?」

かかとをスニーカーに押し込みながら祖父を振り返った。

「気を付けてな」
「うん」

玄関に停めてある自転車にまたがる。曇り空の下で、彼の新しい学校生活が始まろうとしていた。





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