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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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さまようは



今朝も雨だ。薄暗い部屋で目が覚める。ぼんやりとした夢の続きを追おうとするが、やっぱりそれは叶わない。瑞はゆっくりと起き上がった。

サー…という静かな音がカーテンの向こうから聞こえてくる。梅雨の憂鬱な湿気。身支度を整えながら、瑞は昨日のことを思い出していた。

(誰だったっけ…)

神末伊吹に出会った時の、あの不可思議な感情は何だったのだろう。それはいまも続いている。喉に小骨がささったときのようなもどかしさ。完成するまで図柄が見えないジグソーパズルの、最後のワンピースが見つからずにイライラしているような感覚だ。

誰だった?会ったこともないのに、懐かしいだなんて。

初対面の相手に対する感情にしては理解不能だ。そんなことを考えながら居間の祖父に挨拶をする。みそ汁と握り飯が用意してあった。

「今日から朝練だろうと思って、作っておいたよ」
「ごめん、自分のことは自分でするって言ったのに…」

瑞の言葉を祖父は笑い、

「かわいい孫が、自分のためにこんな田舎に来てくれたんだ。これくらいさせてくれ」

そう言って、自分よりも大きな瑞の頭を乱暴にかきまぜるのだった。それが照れくさくて、15になった今でも昔と同じに嬉しい。

離れて暮らしていても、瑞は兄弟の中で誰よりもじいちゃん子ばあちゃん子だった。小学生の夏休みは、ずっとここに住んでいたし、思春期を迎えて荒れたころは、祖父母の声を聴くと不思議と落ち着いたものだ。親とはまた違った形で、無条件の愛情を向けてくれる存在。祖母が亡くなったとき、憔悴する祖父の背中を見た瑞の決断は早かった。

祖父を一人にはできない。そばにいたい。

自分に何ができるわけでもないのに、そう息巻いて両親を説得した。祖父は一日の大半を畑で過ごし、農協へ顔を出すなどし、農業のあれこれに携わっている。農家組合の友人も多く、瑞などいなくとも息災に暮らせるのはわかっていた。それでも、心にあいた孤独な穴をふさぐ手伝いくらいはしたかったから。

「行ってくるね」

祖母の仏壇に手を合わせる。遺影の祖母はにこやかに笑っていて、もうこの世にはいないのだ、二度と頭を撫でてもらえないのだと思うと、瑞は苦しくてたまらない。瑞の苦しみの何倍もの苦痛と、祖父は毎日戦っているのだ。




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