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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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伊吹は黙って聞いていた。信じてもらえるような話ではないのに、彼は疑ったりバカにするようなことは言わず、ただ何か納得したかのようにじっと闇を見据えている。

「…先輩、驚かないんですね」

瑞が問う。

「…この学校は、すごく古い土地に建っているんだ」

伊吹が語り始める。中庭には古い石碑があるし、裏山にも何やら遺跡のようなものがあるという。

「だから、幽霊とか、そういうのじゃないけど…昔からこの土地にいるものが、ときどき影響を及ぼしてくるらしい」

土地にいるもの…。

郁が見たのは、古い土地に住まう何者なのか?ぞくぞくと這うような恐怖が背中を上ってくる。

「昔からそういうことが多いみたいなんだ。詳しいことは知らないし、本当かどうかもわからないけど。学校の怪談めいた作り話かもしれない」

伊吹はそう締めくくった。

「そう、ですよね…ただの見間違い、かも」

郁は自分に言い聞かせた。そう。暗かったから、勘違いしたのかもしれない。大丈夫大丈夫、と。

もう帰るぞ、と促されて、郁と瑞は靴を履き替えた。闇に響く雨音。昇降口を出るときに、瑞が振り返ってじっと闇を見据えた。

「…須丸くん?どうしたの?」
「……いや、」

なんでもない、と彼は言ったが。もしかして闇の中に何かの気配を感じたのかもしれなかった。

これは始まりに過ぎなかった。郁はこの日をきっかけに、日常の裏側に足を踏み入れていくことになる。




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