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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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雨闇の声 探偵奇談1

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「ん?」

教室の窓の外はベランダになっている。そこに、人影が見えた。誰かが立っている。

「…誰?」

漆黒に、かろうじてヒト型が見えるのみだ。影は動かない。雨の中に佇んだまま。郁は声をかける。

「ねえ濡れるよ。入ってきたら?」

反応は、ない。ぴくりとも動かない誰か。ガラス戸に手をかける。鍵がかかっている。郁は錠を持ち上げて戸を開けた。

(あれっ…なんだろう…)

カラカラと戸をあけながら、何かが警鐘を鳴らす。違和感。なにか、おかしい。おかしくないか?不安が喉の奥からせり上がってきたそのとき。

「おい」
「わあ!」

背後から声をかけられ、郁は大きな声を出してしまった。振り返ると瑞が立っている。

「…いま、誰と喋ってた?」
「え?」

神妙な声色だった。ベランダを見る。誰もいない。影は消え、雨音だけがそこにある。

「いまここに、誰かいたの」
「雨降ってるベランダに?鍵かかってんのにどうやって外に出たんだと思う?」

硬い声で問われて、全身に鳥肌が走った。ここは二階だ。外から辿り着くこともできない。

「う、嘘」
「……」

慌てふためく郁に構わず、瑞が戸を閉めて錠をおろした。

「帰ろう。スマホあった?」
「う、うん」