流星群
「お父さんは夜に出かけること許してくれたの?」
「ううん」
え?どうしよう?大丈夫かな…… 背中に嫌な汗が噴き出してくるようだった。
星どころじゃない。頭ぶつけて星が見えちゃった状態に近いぞ。
「駄目じゃないか!」
ボクの焦りにも似た感情は、少々きつい口調の言葉を発した。
車中の暗がりでもキミの困った瞳と固まった頬の様子がぼんやりわかった。
「ボクも何やってんだ!帰るよ」
ボクは、自動車のキーをひねりセルを回す。キュルキュルキュル。エンジンがかかった。
ボクの腕に遠慮がちにかけたキミの手が制止する。
「違う!ごめんなさい。大丈夫。ちゃんと言ってきた。許してもらって車借りてきたから」
ふぅん。ボクは、息をつく。重い重い溜息のような息だ。
「本当だよね? いけない冗談を言うこと、ボクは嫌だよ」
キミは頷いて言う。
「にゃん」
「にゃんじゃない……」
「ごめんなさい」
ボクはすぐには、次の言葉が出てこなかった。エンジンを切ってハンドルを握った手を緩めた。まだその手のやり場が見つからず、そのままハンドルの上に置いたまま、フロントガラスを見つめた。ボク自身が驚き、一気に上がった感情がなかなか下りてこない。
数分の沈黙は、夜が明けてしまうほど長く感じられた。別に怒っているわけじゃない。
焦ったり、感情が上がったり、普段ボク自身の忘れている感情に面食らっているだけだった。でもそんな言い訳もしない沈黙は、横にいるキミの笑顔を曇らせている要因としては重大だ。瞳濡れてる? 潤んでる? 見ちゃいけない。安易にキスしてしまいそうだ。
「あ」
キミが声を上げた途端、時間が動き出した
「どうした?」
「流れたみたい」
え? ボクが見る空には跡形もない。
「外に出てみようか」
頷くキミの横顔に 笑みが戻った気がした。