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流星群

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二週間ほどした夕暮れのこと。
キミがやってきた。
ボクにはないことだけれど世間は少しまとまった休暇がある頃、キミも「仕事はお休みなの」と言っていたね。
部屋に上がるのもそこそこにボクとキミは玄関を出た。
「コレでいい?」
キミは、ボクに鍵を渡した。仕事場で使っているらしい自動車を貸して貰ってきた。
「運転していく?」
キミの首は横に振られた。そっか。ボクは助手席のドアを開けてキミを乗せると運転席に乗り込んだ。向かうは、あの岬公園。空を見上げるとまだ雲が残っていた。
たとえ、綺麗に見られなくてもきっと素敵な想い出になるだろう。するんだと願った。
闇に向かって走っていくように辺りは暗くなってきたけれど、街の明かりは明るい。
信号で停まって 夜空を見上げても 星ひとつ見当たらない感じだ。キミが あっと一等星を見つけて声を上げた。それだけでもいいよ。
夜のドライブなんてしたことあったかなぁ。夜に散歩はしても…… 
ボクも自動車の運転するのは仕事のときがほとんど、キミと出かけるときはなかったね。
キミは、体を捻り向いて後部座席におかれた袋の中から取り出したのはおやつ。
夜のピクニックだね。
運転するボクの口に時折放り込む。あれ?同じ味ばかりだな……
キミの苦手味がボクの口に入れられていることに気付いたのは、岬公園に着いた頃だった。

しぃーんと静まった公園の駐車場から一望できる海は穏やかで、小さくぶつかり合う波がしらが白く見えては砕けていく。耳が静けさに慣れてくると波音が聞えてきた。
キミのはしゃぐ声もない。キミの存在を確かめるのは、繋いだ手と手。
一度は車外に出たものの、まだその時間までにはしばらくあった。
「車の中に戻る?」
頷くキミを包む闇も幾分濃くなったように感じられた。
何か話したほうがいいかなとボクは考えていた。部屋ならば、仕事で背中を向けていてもキミの存在が温かく感じられた。話をしなくても心が触れ合っているような感覚なのだ。
気にしなくていいと言ってしまうと、ずいぶん非情な冷たいヤツに思われてしまうだろうけれど、それだけキミの邪魔にならない気配をひしひしと感じているんだと思った。

作品名:流星群 作家名:甜茶