慟哭の箱 12
「へえ」
*真尋です!清瀬さん、もうすぐ俺らの誕生日でーす!お祝い期待してますから!ボーナス出たよね!うまいもん食べるぞ―!
*清瀬さんとディズニーランドでクリスマスデートしたい(‘ω’)ノ
手を繋いで一緒にシンデレラ城見たいです(*´з`)
氷雨より( *´艸`)
*りょうたです
みんなとでんしゃにのれたらいいな。いっしょにケーキもたべたいな。
*みんな盛り上がってていいぞー!旭はなんかないの?真尋より
*俺は、みんなでいつも通り、一緒にご飯を食べられたらいいよ 旭
*えー、もっとなんか面白いことしよーよー!
*一弥とタルヒは?お願いとか、欲しいもの!
せっかくの誕生日だよ?盛り上がろーよー♪
*家でじっとしてたい。ひとごみ嫌い。おみやげになんかおいしいもの買ってきてくれたらそれでいい
*タルヒーたまには外の空気すえー引きこもりになるぞー
*もうなってんじゃんね( ;∀;)
微笑ましいやりとりが続いているが、一弥からは興味もないのか返事がない。
「いいわね。年相応っていうか、見ていてほっとする」
「…氷雨が母から女になってるんですが、それは…」
ガンガンアピールしてくる彼女の若い熱意におじさんはくたびれ気味である。
「そうなのよ。彼女、最近わたしにちょっとトゲトゲしいんだ、態度が」
「はい?」
「…いいの、こっちのことだから。でも、いいことじゃないかな?だって、もう母としての役割が終わったということ。つまり須賀くんの自立を示しているということなんだから。恋する乙女にうんと振り回されるといいわ」
自立か。
あれから、もうひと月以上が過ぎる。旭の周辺は、犯人逮捕により一応の決着がつき落ち着きを取り戻している。大学には復帰していない。この一年は治療と、そして生活を立て直すことに専念するよう、野上と清瀬がすすめたのだ。
彼はまだ一人きりで生きていける状態ではない。金銭的な問題はない。両親の残した遺産があるのだ。問題なのは、旭が心のよりどころをすべて失っていること、生活を立て直す基盤がないことにあった。両親はいない。親戚は頼れない。当分は清瀬と生活を続けるしかないのだが、それについて清瀬も野上も異存はない。