小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

慟哭の箱 12

INDEX|3ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

明日



年の瀬が近づく12月の街並みが、窓の下に映っている。寒さだけでなく、ほっとするある種のぬくもりを感じるこの季節が、清瀬は嫌いではなかった。うっすらと積もる雪の上を歩くときの静かな昂揚感であるとか、熱いコーヒーを飲んだ時に感じるほっとする心地よさとか。

昼休み中の野上の診察室で、清瀬は旭の治療経過を彼女から聞いている。順調という言葉にひとまずは安堵する。イシュの指導のもと、旭は人格とうまく付き合いながら、空白を埋めている。ともに暮らす日々の中で、旭が少しずつ落ち着きを取り戻していることは清瀬にもわかるのだが、やはり彼の精神状態が完璧に健全であるか問われれば、今もまだ脆い砂の上でぐらぐらと揺れていることは否定できない。

「そういえば今日は夕方からでかけるんだって、須賀くんが。さっきうきうきしながら帰ったわよ」
「ああ、もうすぐ誕生日だっていうから」
「あら、誕生日なの」

野上が笑う。わが子を思い浮かべるかのような表情だった。

「らしいんです。まあ本当の誕生日はわからないみたいですけど」

二十五日というから、間近に迫ったクリスマスなのだ。

「それで、あの交換日記で、誕生日に何欲しいかっていう話題で盛り上がっているのを、真尋に見せられちゃって。俺、今日なら夕方時間作れるから、お祝いしてあげようかなって」
「どれどれ?」

交換日記を渡す。

作品名:慟哭の箱 12 作家名:ひなた眞白