慟哭の箱 12
「交換日記にね、ちゃんと書いてありますよ」
交換日記?
聞き返そうとしたが、いたずらっぽく言った旭は滑り込んできた電車に飛び乗る。慌ててあとに続いた。走り出した電車は、夜景の中を進んでいく。並んで立ちながら、それを見送った。
「清瀬さんって、絶叫系大丈夫ですか?俺大好きなんですけど」
「俺はお化け屋敷以外なら何でもいけるよ」
お化け屋敷だけはだめだ。怖いとかいうより、先が見えないのが嫌で、先を予想できないのが嫌だ。そう言うと、なんか言い訳がましいなと旭が意地悪く笑う。
「じゃあ一番はお化け屋敷、行きましょうね」
「…はい」
「三回くらい入りたいなあ~楽しみだなあ~」
「ちょっと待ておまえ真尋だろ」
「旭です」
「……」
「シンデレラ城の前ではちゃーんと手を繋いでくださいよ?」
「おまえ氷雨?」
「旭ですってば」
愉快そうな横顔に、まあなんでもいいかという気持ちになる。
まじりあっている、と野上は言った。
今この目の前にいる旭が、本来の須賀旭なのだろう。
心配性で気弱で、ちょっと子どもっぽくて、ロマンチストで。
「…清瀬さん」
「はいはい、今度は何?」