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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 12

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「交換日記にね、ちゃんと書いてありますよ」

交換日記?
聞き返そうとしたが、いたずらっぽく言った旭は滑り込んできた電車に飛び乗る。慌ててあとに続いた。走り出した電車は、夜景の中を進んでいく。並んで立ちながら、それを見送った。

「清瀬さんって、絶叫系大丈夫ですか?俺大好きなんですけど」
「俺はお化け屋敷以外なら何でもいけるよ」

お化け屋敷だけはだめだ。怖いとかいうより、先が見えないのが嫌で、先を予想できないのが嫌だ。そう言うと、なんか言い訳がましいなと旭が意地悪く笑う。

「じゃあ一番はお化け屋敷、行きましょうね」
「…はい」
「三回くらい入りたいなあ~楽しみだなあ~」
「ちょっと待ておまえ真尋だろ」
「旭です」
「……」
「シンデレラ城の前ではちゃーんと手を繋いでくださいよ?」
「おまえ氷雨?」
「旭ですってば」

愉快そうな横顔に、まあなんでもいいかという気持ちになる。
まじりあっている、と野上は言った。
今この目の前にいる旭が、本来の須賀旭なのだろう。

心配性で気弱で、ちょっと子どもっぽくて、ロマンチストで。


「…清瀬さん」
「はいはい、今度は何?」


作品名:慟哭の箱 12 作家名:ひなた眞白