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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 11

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「一弥」

名前を呼ばれたその瞬間、そこはもう暗い映画館ではなかった。

いつか、清瀬の部屋でこっそり見た、満天の星空の写真。それと同じだった。飲み込まれてしまいそうな星空。見たことのない星座。流れ星がすべっては消えていく。足元もまた、瞬く星々が埋め尽くしている。


箱の外の、美しい世界。このひとと見る世界。


「一弥」


星空の下に、もう過去の残骸はない。清瀬がいて、優しい風が吹いている。夜の匂いがするだけ。


「帰ろうか」


帰れる。
帰れるんだ。
帰る場所が、あるんだ。箱の外にも。


言葉にならない思いをこめて手を握り返す。星が流れる。
目を瞑っても星空が見えていた。


もう寒さも痛みも感じない。
ぬくもりだけだった。


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作品名:慟哭の箱 11 作家名:ひなた眞白