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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 11

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「消えないよ。今度は、きみの番」

優しい声は続ける。

「この暗い場所を出て、光を浴びる番」

光。

「生きていいと言ってくれたひとがいるだろう?」

絶対叶える――。
耳の奥に蘇る声。あのとき、確かに一弥は聞いた。あれは、そうだ。あのひとだ。

「ほら、もう」

そこにいるよ。

声に導かれて顔を上げる。一弥の隣に、清瀬が立っていた。こちらを見つめて、優しく笑っている。


「行くんだ」


背後の声がつぶやく。
ガコンと天井が音をたてて動く。がらがらと音を立てて、崩れていく壁。壁の向こうから、夜がやってくる。美しい濃紺が、じわじわとあたりを包んでいく。


「箱が、開くよ」


清瀬が言った。差し伸べられた手を、一弥は恐る恐る握った。温かな手。どうしてこんなところにいるんだろう、今更ながら一弥は思う。こんな、心の奥底の、絶対的に隠された場所まで、清瀬は入りこんできた。

強く握り返す。夢でも、幻でも、もう何でもいい。

ずっと逃げ出せなかったこの場所。逃げることさえ怖くて、役目を放棄することもできなかった。

このひととならば、俺はここから出られる。

作品名:慟哭の箱 11 作家名:ひなた眞白